ちゃんちゃんこを着る理由は？還暦の本当の意味とは

1. 還暦とは何か？

還暦（かんれき）とは、干支（えと）が一巡し、生まれた年の干支に還る（かえる）ことを意味する長寿の祝いです。この「還る」という言葉には、「生まれたての赤ん坊に戻る」という意味が込められており、人生をリセットし、新たな始まりを迎えるという深い意義があります。

現代では「定年退職」と重なることも多く、第二の人生のスタートとして前向きに捉えられています。

還暦は、満60歳で迎えます。

日本で古くから使われてきた干支（十干十二支）は、60年で一巡します。例えば、甲子（きのえね）の年に生まれた人は、60年後に再び甲子の年を迎えます。この60年で干支が「一回り」したことが、還暦祝いの起源です。

還暦の風習は、奈良時代に中国から伝わり、平安時代には貴族の間で広まりました。室町時代以降には庶民にも定着し、長寿を祝う重要な行事として受け継がれてきました。かつて平均寿命が短かった時代には、60歳まで生きることは大変めでたいこととされ、盛大に祝われました。

ちゃんちゃんことは、袖のない羽織りのことで、主に子供が着るものです。還暦祝いの際に着る「赤いちゃんちゃんこ」は、この「子供が着るもの」になぞらえて、「生まれたての姿に戻る」という意味を強調するために用いられます。

還暦が満60歳で訪れるのは、十干（じっかん：甲・乙・丙・丁など10種類）と十二支（じゅうにし：子・丑・寅・卯など12種類）を組み合わせた60通りの周期（六十干支）が一周するためです。

生まれた年の干支がもう一度巡ってくるこの節目は、暦が一周したことを意味するため、「暦が還る」＝還暦、と呼ばれるのです。

還暦祝いに赤いちゃんちゃんこを贈って着るのには、明確な理由があります。

魔除けの色
古来より赤色は魔除けの色とされており、赤ちゃんが産着として赤色のものを着る習慣がありました。
生まれ直しの象徴
「干支が一巡して生まれた年の暦に還る＝赤ちゃんに戻る」という意味合いから、再び邪気から身を守り、新たな人生をスタートさせるための赤色の産着に見立てて贈られます。

還暦祝いは、長寿の喜びと、これまでの人生への感謝を伝えることが目的です。

形式にとらわれず、主役の意向を尊重し、食事会や旅行など、思い出に残る形で祝うのが現代の主流です。

伝統的な赤いちゃんちゃんこの他にも、以下のようなものが喜ばれます。

最近では、ちゃんちゃんこを着用することに抵抗がある方も増えています。そのため、ちゃんちゃんこは写真撮影用にし、普段使いできる「赤いポロシャツ」や「赤いマフラー」を贈るなど、モダンでおしゃれな形で赤色を取り入れるのが人気です。

相場　贈る相手や関係性によって異なりますが、一般的に1万円～5万円程度が目安です。特に、お子様から親御様への個人での贈り物であれば1〜3万円、兄弟姉妹や家族一同で旅行や高価な記念品を贈る場合は5万円以上になるケースも多く見られます。孫から贈る場合は、金額よりも気持ちを重視した数千円の品や手作りのプレゼントで十分です。
タブー　「老」や「苦」を連想させる櫛（くし）や、別れを連想させるハンカチなどは避けるのが一般的です。さらに、「老い」や「衰え」を連想させる老眼鏡や補聴器、また履物（靴や靴下）は「踏みつける」という意味合いから避けるべきという考え方もあります。現金や商品券を贈る場合は、金額が露骨にならないよう、他のプレゼントに添える、または熨斗（のし）袋に入れて贈るなど、丁寧な包み方をすると良いでしょう。