「今まで普通にできていたことが、急にうまくできなくなった…」
そんな経験はありませんか？ スポーツだけでなく、仕事や日常生活の中でも、理由がわからないまま自信を失ってしまうことがあります。
もしかすると、それはイップスと呼ばれる状態かもしれません。
この記事では、
- イップスってそもそも何？
- スランプとはどう違うの？
- 私も当てはまるのかな？
といった疑問に対して、専門的な言葉はなるべく使わず、 初めて聞く方でも安心して読めるよう、やさしく丁寧にお話ししていきます。
「なんだか最近うまくいかない…」 そんな気持ちを抱えている方の、心が少しでも軽くなれば嬉しいです。
イップスとは？意味を簡単に解説
イップスとは、強い緊張や不安によって、体が思うように動かなくなってしまう状態のことです。
たとえば、これまでは何も意識せず自然にできていた動作が、 「失敗したらどうしよう」「ちゃんとやらなきゃ」と考えた瞬間に、 急にぎこちなくなってしまう…というようなケースです。
ポイントは、
- 技術が足りないわけではない
- 練習不足というわけでもない
- やる気がなくなったわけでもない
という点です。
むしろ、真面目で一生懸命な人ほど、 この状態に戸惑いやすいと言われています。
頭では「いつも通りやれば大丈夫」「本当はできる」とわかっているのに、 いざその場面になると手が震えたり、体が固まってしまったりして、 思うように動かせなくなってしまいます。
このような反応は、自分の意志でコントロールできるものではありません。 そのため、 「どうして急にできなくなったの？」「自分は弱いのかな…」と、 不安や焦りを感じてしまう方がとても多いのです。
イップスの主な症状・具体例
イップスは、さまざまな場面で起こります。
特別な人だけに起こるものではなく、年齢や経験、性別に関係なく、誰にでも起こる可能性があります。スポーツの試合や仕事の大切な場面など、「ここで失敗したくない」と思う気持ちが強いほど、イップスの症状が表れやすくなることもあります。
そのため、「自分だけがおかしいのかも…」と不安になる必要はありません。まずは、どんな場面で起こりやすいのかを知ることが、安心への第一歩になります。
スポーツでのイップスの例
- ゴルフで急にパターが打てなくなる
- 野球で簡単な送球ができなくなる
- サッカーでキックの瞬間に体が止まる
どれも、これまで何度も何度も繰り返してきた、ごく当たり前の動作なのに、 「失敗しないかな」「ちゃんとできているかな」と意識した瞬間に、 体の動きがぎこちなくなったり、思うように力が入らなくなったりするのが、イップスの大きな特徴です。
本人としては普通にやろうとしているだけなのに、 無意識にブレーキがかかってしまい、 「どうしてこんな簡単なことができないんだろう…」と戸惑ってしまうケースも少なくありません。
仕事や日常生活でのイップスの例
- 人前で話そうとすると頭が真っ白になる
- 電話をかけるだけで強い緊張を感じる
- ペンを持つ手が震えて文字がうまく書けない
スポーツをしていない方でも、 仕事や日常の中でイップスに近い状態になることは、実はそれほど珍しいことではありません。
たとえば、何度も経験している業務なのに急に手が止まってしまったり、 以前は平気だった場面で強い緊張を感じるようになったりすることもあります。
こうした変化は、心が疲れているサインである場合も多く、 決して「気合いが足りない」「弱いから」といった理由ではないのです。
イップスはどんなときに起こりやすい？
イップスは、次のような場面で起こりやすいといわれています。
- 絶対に失敗できないと思っているとき
- 周囲の目や評価が気になるとき
- 過去の失敗を思い出してしまったとき
「うまくやらなきゃ」「迷惑をかけたくない」 そんな気持ちが強いほど、 心は気づかないうちに自分を守ろうとして、体を緊張させてしまいます。
決して弱いわけでも、気持ちが足りないわけでもありません。 ただ一生懸命だからこそ、 無意識のうちに体がこわばり、思うように動かせなくなってしまうのです。
ビジネスにおけるイップスとは
仕事の場面で起こるイップスも、決して珍しいものではありません。
- 大事なプレゼンが近づくと体調が悪くなる
- 上司の前だとミスが増える
- 以前うまくいかなかった仕事を避けてしまう
責任感が強く、 「ちゃんとやらなきゃ」「失敗したらいけない」と強く思う人ほど、 知らないうちに自分にプレッシャーをかけてしまい、 結果としてビジネスイップスを抱えやすい傾向があります。
まわりから見ると真面目で頼れる存在でも、 本人の心の中では常に緊張状態が続いていることも少なくありません。
イップスの主な原因
イップスの原因はひとつではありません。 多くの場合、いくつかの要因が少しずつ重なり合って、ある日ふと表に出てくるように感じられます。
「これが原因です」とはっきり言えないからこそ、 戸惑いや不安を感じてしまう方も多いのですが、 決して特別な弱さがあるわけではありません。
強いプレッシャー
失敗への恐れや、周囲からの期待の大きさが、 知らないうちに心と体を強く緊張させてしまいます。
「ちゃんとやらなきゃ」「失敗できない」と思うほど、 リラックスして動くことが難しくなり、 本来の力を出しにくくなってしまうことがあります。
過去の失敗体験
以前の失敗が強く印象に残っていると、 「また同じ失敗をしたらどうしよう…」という不安が、 無意識のうちに体の動きにブレーキをかけてしまいます。
頭では「大丈夫」と思っていても、 心が先に反応してしまうのが特徴です。
完璧を求めすぎる気持ち
高い基準を持っていること自体は、とても素敵なことです。 ただ、その基準があまりにも高すぎると、 常に自分を追い詰めてしまい、心が疲れてしまいます。
「失敗してはいけない」という思いが強くなるほど、 自然な動きや判断がしにくくなり、 イップスにつながってしまうこともあるのです。
イップスになりやすい人の特徴
次のような傾向がある方は、 イップスになりやすいと言われています。
- 真面目で責任感が強い
- 努力家で頑張りすぎてしまう
- 周囲の評価を気にしやすい
- 失敗を長く引きずってしまう
こうして見ると、 どれも「短所」ではなく、まわりから評価されやすい とても素敵な性格ばかりですよね。
何事にも一生懸命で、 人の期待に応えようとする気持ちが強い人ほど、 気づかないうちに無理を重ねてしまいやすいものです。
「もっと頑張らなきゃ」「ここで踏ん張らなきゃ」と 自分を励まし続けているうちに、 心と体が休むタイミングを見失ってしまうこともあります。
すると、ある日突然、 今まで当たり前にできていたことが うまくできなくなってしまい、 自分でも驚いてしまうことがあるのです。
決して弱いからでも、心が折れてしまったからでもありません。 むしろ、ここまで頑張ってきた証として、 体や心がサインを出しているとも考えられます。
イップスとスランプの決定的な違い
イップスとスランプは、 どちらも「思うようにできない状態」に見えますが、 その原因にははっきりとした違いがあります。
イップスの場合
- 心理的な不安や恐怖が大きく関係している
- 意識すればするほど、体が動かなくなってしまう
頭では「できるはず」と理解していても、 気持ちとは別に体が先に反応してしまうのが特徴です。
スランプの場合
- 技術面や体調の問題が原因になりやすい
- 休息や練習を続けることで、少しずつ回復しやすい
「不安」や「怖さ」が強く前に出ているかどうかが、 イップスとスランプを見分ける、大きなポイントになります。
イップスは病気なの？
イップスは、必ずしも病気というわけではありません。
多くの場合、 長期間のストレスや緊張が積み重なった結果、 心と体のバランスが崩れている状態と考えられています。
ただし、
- 日常生活に大きな支障が出ている
- 強い不安や緊張が長く続いている
このような場合には、 専門家に相談することで、気持ちが楽になることもあります。
相談することは、 決して弱いことではありません。 自分を大切にするための、大切な選択肢のひとつです。
イップスになったときの向き合い方
イップスかもしれないと感じたとき、 いちばん大切なのは自分を責めすぎないことです。
- 無理に克服しようとしない
- 少し距離を置いてみる
- 完璧を目指さず、できている部分に目を向ける
「早く元に戻らなきゃ」と焦るほど、 心や体には余計な負担がかかってしまいます。
まずは深呼吸して、 「今は少し休む時期なんだ」と 自分に声をかけてあげましょう。
小さな変化を大切にしながら、 あなたのペースで、 少しずつ向き合っていってくださいね。
まとめ
イップスは、 これまで一生懸命に頑張ってきた人ほど、 起こりやすい状態だと言われています。
「できなくなった自分」を責める必要はありません。 これまで積み重ねてきた努力や経験は、 決して消えてしまったわけではないのです。
少し立ち止まって、 自分の心と体をいたわりながら、 ゆっくり整えていってくださいね。
この記事が、 あなたの不安を和らげ、 心が少し軽くなるきっかけになれば嬉しいです。
